特任准教授 | ||
児玉 大樹 | ||
Associate Professor Hiroki Kodama | ||
所属: | 東京大学 大学院数理科学研究科 | |
専門分野: | トポロジー・力学系 | |
Link: | http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~kodama/index.html |
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研究内容
(従来の数学研究)
無限単純群の非一様単純性
無限単純群 G の自明でない元を二つ取りそれぞれ g, h と書く。
群の単純性から g は h 及び h^-1 の共役元の有限個の積として
書けることがわかる。そのような表示に必要な共役元の個数の
最小値を λh(g) と書く。この値 λh(g) が一様な上界を持つとき、
無限単純群 G は一様単純であるという。
一様でない単純群の例として無限単純群 A∞ がある。
更に、d(g,h) = log( Max{λh(g),λg(h)} ) により G\{e} 上に
擬距離 d が定まり、G が一様単純であることと G\{e} が d で有界、
つまり一点に擬等長であることが同値である。
無限単純群 A∞ については、A∞\{e} は半直線に擬等長である
ことがわかる。
円周上の極小微分同相写像 (日本大学・松元重則氏との共同研究)
円周上の C^1 級極小微分同相写像で、 可測な基本領域を持つものを構成した。 これは Denjoy の定理の仮定から有界変動(bounded variation)の 仮定を外すと、定理の結論とは正反対の例が構成できることを意味する。
この結果を示すために、円周上の任意の無理数回転Rに対して、Rを何回施しても互いに交わらないようなカントール集合を円周の部分集合として構成できるという補題を示した。この補題がクロマチンの立体構造の数理モデルとして利用できないかと考えている。
(本プロジェクトに係る研究)
タンパク質の立体構造の数学モデル
タンパク質はアミノ酸がアミノ酸が一列に結合(重合)してできた
ペプチド鎖が、さらに水素結合などにより安定した三次元構造を
得たものと見做すことが出来る。
一つのタンパク質分子に対し、ペプチドユニットを頂点、ペプチド結合や
水素結合を辺とするような有限グラフを考える。これがタンパク質の
グラフによるモデル化である。
グラフによるモデル化の応用例として、結合の両側にあるペプチドユニットの
なす三次元的な角度(回転群の元)グラフの各辺に書き込むことにする。
グラフの閉じた経路ごとに束縛条件が発生するので、書き込める回転群の元
の族には制限が加わる。これらの制限をすべて満たす元たちのなす空間を
タンパク質のモジュライ空間といい、この空間の自由度を量ることで
タンパク質の自由エネルギーの計算をすることが出来る。
クロマチンの立体構造
DNAのサイズは生物により異なるが、ヒトの場合約30億塩基対
であり、まっすぐに伸ばすとおよそ2メートルに達する。
このように長い高分子が細胞内の核と呼ばれる
大きさ100分の1ミリメートルの部分に収まるため、
多段階の折りたたみ構造があると考えられる。
DNAおよそ150塩基対が8つのヒストンと呼ばれるタンパク質に
巻き付いてできた構造をヌクレオソームと呼ぶ。
これを周期的に繰り返すことにより、ヌクレオソームが
一列に並んだ構造(ヌクレオソーム繊維)が出来る。
ヌクレオソーム繊維がさらに折りたたまれてクロマチン繊維という
太さ30ナノメートル(≒3万分の1ミリメートル)の繊維ができるが、
この構造がまだよくわかっていない。
クロマチン繊維はさらにヘテロクロマチンやユークロマチンという
構造をとって染色体を形成し、この染色体が細胞の核におさまっている。
このように、ヌクレオソームがクロマチンを形成する構造が
よくわかっていないので、それをタンパク質の時に用いた
グラフなどを用いて数学的なモデルを構成しよう、と考えている。
上記の円周上の極小微分同相写像の研究で構成した「無理数回転Rを何回施しても互いに交わらないようなカントール集合」も自己相似性と互いにに交わらずに収まるという2つの性質から、クロマチンの数理モデルとして有力であると考えている。
原著論文
論文&プレプリント
- 児玉大樹, 射影的アノソフ流の高次元および複素多様体への一般化, 修士論文, 1998
〔dvi〕, 〔ps〕 - Hiroki KODAMA, Complex Contact Manifolds with Legendrian Vector Fields, 博士論文, 2002
〔dvi〕 - Shigeyuki KAMATANI, Hiroki KODAMA and Takeo NODA, A Birkoff Section for the Bonatti-Langevin Example of Anosov Flows, Proceedings of the International Conference Foliations 2005, Sept. 2006, World Scientific Publishing Co., 229-243
- Hiroki KODAMA and Peter W. MICHOR, The homotopy type of the space of degree 0 immersed plane curves, Revista Matematica Complutense 19 (Sept. 2006), no. 1, 227-234
〔arXiv〕, 〔ESI-preprint 1703〕 - Hiroki KODAMA, Yoshihiko MITSUMATSU, Shigeaki MIYOSHI and Atsuhide MORI, On Thurston's inequality for spinnable foliations, Foliations, Geometry, and Topology: Paul Schweitzer Festschrift, Nov. 2009, 173-193
- Hiroki KODAMA and Shigenori MATSUMOTO,
Minimal C^1 diffeomorphisms of the circle which admit measurable fundamental domains,
Proc. Amer. Math. Soc. 141 (2013), 2061-2067
〔arXiv:1005.0585v2〕 - Hiroki KODAMA, On non-uniformly simple groups, preprint 2011
〔arXiv:1107.5125〕 - Kentaro Mikami, Hiroki Kodama and Yasuharu Nakae,
Higher weight Gel'fand-Kalinin-Fuks classes of formal Hamiltonian vector fields of symplectic R^2, preprint 2012
〔arXiv:1210.1662〕
社会的活動
- 以下を含む日本数学オリンピック・国際数学オリンピックへの貢献
−− 第39回国際数学オリンピック台湾大会日本チームオブザーバー, 1998年7月
−− 第40回国際数学オリンピックルーマニア大会日本チームオブザーバー, 1999年7月
−− 第41回国際数学オリンピック韓国大会日本チーム団長, 2000年7月
−− 第44回国際数学オリンピック日本大会問題委員会副委員長, 2003年7月 - スーパーサイエンスハイスクール事業における数学特別講座, 筑波大学付属駒場高校, 東京
−− 結び目理論入門, 2002年7月10日
−− 曲面の分類(モース理論入門), 2002年12月16日 - 科学技術振興機構による「国際科学オリンピック・フォーラム 目指せ!科学の星『才能×挑戦=きみの未来』」における講演・パネルディスカッション, 国際交流会議場, 東京, 2009年9月29日
- ロスト・イン・トランスレーション, 書籍『エレガントな問題解決』の書評, 数学セミナー2011年7月号, 日本評論社
- 2014年夏学期の授業担当
−− 数学IB(微分積分学) 通期 (理科I類1年1〜10組の選択必修科目・および文科各類の選択科目)
−− 全学自由ゼミナール 6月9日および6月16日 (教養学部前期課程の選択科目)
−− 現象数理II 6月24日および7月1日 (理学部数学科3年生対象)